食事をする際、咀嚼や嚥下のときに必要なのが舌の筋力です。舌筋力は加齢とともに低下する傾向があり、舌筋力が低下すると食物を唾液と混ぜてまとめ、喉へ移送することが難しくなります。近年、舌筋力の評価として舌圧が用いられていますが、舌圧測定器を使った舌筋力訓練も普及しつつあります。
今回は、舌筋力訓練としても使える舌圧測定器を紹介します。
JMS舌圧測定器とは?
JMS舌圧測定器(株式会社ジェイ・エム・エス社)は国内唯一の舌圧測定器です。以前は最大舌圧の測定を測定する際に使用していましたが、2023年度から口腔や嚥下機能の低下に対して行うリハビリテーション(舌筋力訓練)にも使用できるようになりました。
舌圧の測定方法について
舌圧プロープを口腔内に入れ、硬質リングを前歯で軽くかんで保持します。
数秒間、舌で舌圧プロープのバルーンを力いっぱい口蓋(上あご)へ押し付けてつぶします。
数秒経つと舌圧の数値が測定器の液晶パネルに表示されます。
(※義歯を使用している方は装着してから測定する必要があります。)


最大舌圧の目安(kPa)
成人男性(20~59歳) 35~
成人女性(20~59歳) 30~
60代(60~69歳) 30は欲しい
70歳以上高齢者 20は必要
出典 津賀一弘:簡易型舌圧測定装置を用いる最大舌圧の測定,『顎口腔機能の評価』,日本顎口腔機能学会,41-44,2010.
舌筋力訓練の方法について
プロ―ブを口腔内に入れ、舌でバルーンを口蓋へ30回押し付けます。
この反復運動を1日3セット、週3回、8週間にわたって継続します。
訓練の回数や期間については文献によって多少異なりますが、今回は株式会社ジェイ・エム・エス社が活用事例として公開しているセミナーレポートを参考にしています。
運動負荷は先行研究から、健常高齢者の舌圧訓練において訓練強度100%!
80%,60%で有意差がないことが知られています1)。
また訓練頻度については週3回と週5回で統計学的な差はないとされています2)。
訓練強度や訓練頻度は多ければいいというものではなく文献によっては強度が最大舌圧60-80%であれば30回×3set/日 計90回3)、強度が最大舌圧100%であれば5回×2set/日 計10回4)というように1日当たりの訓練頻度は訓練の強度や反復回数によって異なります。したがって、訓練に慣れていない1週目は最大舌圧の60%に設定し、2週目からは最大舌圧の80%に増やすといったように、数値として裏付けされた訓練負荷、訓練頻度を人それぞれに合わせて設定することができるようになりました。
また、舌圧の数値をリアルタイムで確認しながら筋力トレーニングを行える利点もあります。
舌圧測定器を使用した舌筋力訓練のほかにも、舌圧測定器の最大舌圧を利用した舌圧トレーニング器具『ペコぱんだ』でリハビリをする方法もあります。
ペコぱんだとは
株式会社ジェイ・エム・エスが舌の筋力を強化するために開発した自主訓練用トレーニング用具です。押しつぶす強度によって6種類に分けられており、使用者に合わせて使い分けることができます。実際に使ってみた感覚で、どの押しつぶし強度にするか決めることも出来ますが、事前に舌圧測定器で最大舌圧を測定していれば具体的な数値に基づいたペコぱんだを選ぶことができます。

ペコぱんだの規格 押しつぶし強度(kPa)
SS(ブルー) 5(極めて柔らかめ)
S(ピンク) 10(柔らかめ)
MS(バイオレット) 15(やや柔らかめ)
M(グリーン) 20(普通)
MH(オレンジ) 25(やや硬め)
H(イエロー) 30(硬め)
当院ではこの舌圧の測定をした後、ペコぱんだを使用しての舌筋力訓練を実施しています。今後も舌圧測定器と併用し、患者様の病態に合わせて舌筋力の測定や訓練に活かしていきたいと思います。
1)Tongue-Strengthening Exercises in Healthy Older Adults: Does Exercise Load Matter? A Randomized Controlled Trial. Steen et al. Dysphagia (2019) 34:315‒324
2)Tongue-Strengthening Exercises in Healthy Older Adults: Effect of Exercise Frequency – A Randomized Trial Steen et al. Folia Phoniatrica et Logopaedica 2021, 73,(2)109-116
3)健常高齢者における舌筋力強化セルフエクササイズの効果
Efects of Tongue-Strengthening Self-Exercises in Healthy Older Adults: A Non-Randomized Controlled Trial Yano et al Dysphagia (2021) 36:925‒935
4)舌圧抵抗トレーニングは舌と舌骨上筋の機能を同時に改善する Tongue-pressure resistance training improves tongue and suprahyoid muscle functions simultaneously
Namiki et al Clinical Interventions in Aging 2019:14










