自律神経の働きと整え方

脳神経リハビリ北大路病院
心療内科医 革島定信 

 心身の健康の維持や不調の改善のために知っておきたいことを、今回は自律神経という視点から少し紹介していきたいと思います。

自律神経って何??

 自律神経とは、内臓や血管を支配している神経です。運動をすると心臓がドキドキし、暑いと汗が出るのは自律神経が自動的に身体を調節しているからなのです。自律神経は交感神経と副交感神経の2種類に分けられ、ほぼ正反対の作用をします。例えば、交感神経がはたらくと心拍数が増大し、副交感神経がはたらくと心拍数は減少します。自律神経は周囲の環境や身体の活動状態に応じてはたらき私たちの身体を24時間365日、常に最適な状態にしようと頑張ってくれている、とても働き者の神経です。

交感神経の働きとは??

 交感神経は、身体や心がストレスを感じたときにはたらき、身体全体が緊張して筋肉がこわばります。心臓はドキドキ、息はハアハアし、胃腸の動きが止まり、消化液の分泌が減り、排便や排尿も止まります。交感神経が過剰にはたらき続ける状態になると、過敏性腸症候群、胃潰瘍の他、高血圧、月経不順、不安、不眠、情緒不安定、イライラ、集中力の低下、頭痛、動悸、息切れ、めまい、肩こり、肌荒れ、倦怠感、冷え、手足のしびれなど様々な症状の原因となり、近年では癌の増殖や転移にまで影響している可能性が報告されています。

 交感神経はストレスで活性化しますが、そのストレスには精神的なもの以外にも、暑さや寒さなどの気温の変化、天候や気圧の変化、病気や怪我、長時間労働、栄養不足、睡眠不足、不規則な生活、妊娠や月経など様々な身体的ストレスがあり、生きている以上ストレスと無関係ではいられません。

副交感神経の働きは??

 副交感神経は、交感神経とは反対に身体の安静状態を作り出します。体力の消耗を抑え、胃腸やすい臓のはたらきが活発になり、栄養を補給しエネルギーを蓄えます。

自律神経の働きを整えましょう

 自律神経は状況に応じて自動的に交感神経・副交感神経が切り替わるのですが、ストレスによって交感神経が日常的に過剰にはたらき続けていると、切り替えが上手くいかなくなります。特に現代は様々なストレスにさらされる社会であるため、自律神経のはたらきが乱れないようにするよりも、たとえ乱れても整えられる方法を知っておくほうが現実的でしょう。整える方法は、ストレスを軽減することはもちろん、適切な睡眠・栄養・運動を心がけることや腸内環境の改善、湯船につかる、マッサージをしてもらう、ストレッチをすること等、数多くの方法があります。お手軽でどこでもできる方法としては、ゆったりとした穏やかな呼吸を繰り返すだけでも副交感神経のはたらきをある程度高めることが期待できます。

 いずれにしろ自律神経機能は私たちの普段の生活の中での工夫で改善し得るものですので、ぜひ自律神経のはたらきを良い状態に整えて健康な日々を送っていきましょう。