深草京しみずでの認知症予防のリハビリテーションについて

◎認知症について

加齢とともに脳の機能が衰え、物忘れに始まる様々な認知機能低下が生じてくることがあります。一般的にどんな人も加齢により若いときに比べ、「物覚えが悪いな」と感じたり、頭の中の記憶がすぐに思い出す(想起する)ことがしにくく感じるのではないでしょうか。そのような物忘れについては、それほど生活に困るほどのものではなく過ごしていけるものですが、一方で、脳機能の著しい低下が見られるようになると、脳の病気として認知症の症状により記憶量全般が低下し日常生活に支障が出てくることがあります。

すでに私たちになじみのある言葉である「認知症」という名称ですが、名称が変わったのは2004年と、そこまで古い言葉ではないのです。ちなみに、認知症以前名称である、痴呆という表現がありましたが、日本の歴史をさかのぼると明治時代頃からすでに痴呆という言葉が存在していたそうで、すでにそのような時代からも現在の認知症の症状に類似するような事実があったのだろうと推測されます。

認知症ケアについては、痴呆から認知症への言葉が変化する以前の2002年の介護保険制度施行とともに、知識・理解・そしてケアの実践が始まってきました。

認知症患者の推計は、2012年度で約460万人。2018年推計では高齢者の7人に1人、2025年には5人に1人(約670~730万人)が認知症を有するという厚労省の調査があります。人生100年時代ともいわれるこの長寿社会日本においても、高齢化とともにわたしたちは認知症と向き合ってきました。認知症ケアをめぐる変遷は介護報酬改定の流れとともに、都度変化してきていますが、国は令和元年に、認知症施策推進関係閣僚会議で「認知症施策推進大綱」を提言しました。この中で国は認知症ケアの新たなステージとして、以下をキーワードに認知症ケアの推進を行おうとしています。

・認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる「共生」を目指す。
・認知症バリアフリーの取組実践と普及。通いの場の拡大など「予防」的関わりを促進。

我が国の高齢者の4人に1人は認知症または軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)という国の研究データ(2012年時点)があります。一般的に年齢ごとの認知症有病率は85歳以上で40%~60%程度の方が認知機能に何らかの障害を有するといわれ、記憶障害(物忘れ)や見当識障害、理解・判断力の低下などの認知機能低下が見られるようになってきます。

◎深草京しみずが行うリハビリテーション実例

平均年齢80歳前後の方が利用頂いている深草京しみずの老人保健施設においても、認知症ケアはとても大事です。今回いくつかの実例をご紹介したいと思います。

◎実際例①

認知症予防としてタブレット端末を使用した認知機能訓練をご紹介します。タブレット端末は、ご家庭でもお持ちの方が増えてきているICT機器の1つですが、当施設はタブレットを活用した認知症予防訓練を実践しています。

タブレット端末には、認知症関連だけでも多くの種類のアプリケーションが存在します。たとえば、当施設では、実際に漢字の読み書き、日本地図パズル、麻雀などの頭を使うゲームなどのアプリケーションを使いながらゲーム感覚で脳を使って頂き、理解力などの認知機能を維持向上できるようにアプローチしています。タブレットの利点は、ゲーム感覚で行うことで「課題をしなければならない」という義務感が少なくリハビリテーションを行える点にあります。

◎実際例②

もう一つのリハビリ例は、二重課題を用いた運動です。同時に複数のことを処理(運動や考えること)することを二重課題と言いますが、認知症の方はこの二重課題を処理する能力が低下するため、二つのことを同時にすることが苦手になってきます。

逆を言えば、この二重課題を行う際、人の脳の中では脳が複雑な働きをする結果、課題を処理する機能が働くとも言えます。そのため、認知機能の維持や改善あるいは認知症予防において、二重課題をリハビリテーションとして取り入れることが有効とされます。

二重課題の例 ~やってみましょう!~

・足踏みをしながら3と5の倍数で手をたたく。
・計算やしりとりをしながら散歩をする。
・人と話しながら歩く。

~コグニバイクを使用した二重課題~

当施設には、コグニバイク(cogenibike)というリハビリ機器があります。コグニバイクは国立長寿医療研究センターが軽度認知障害改善に効果があるとされる、認知課題と運動を同時に行う二重課題を行うために作成されたリハビリ機器です。(英語の認知を表すCognition と運動機器のバイクbikeをに足してコグニバイクと呼びます)。

写真では、使用者は、バイクのペダルを足でこぐ運動を行いながら、付属のモニターに表示される課題をこなしていきます。(写真では、ペダルをこぎながら、画面に表示されるじゃんけんの課題を同時に行っていますが、その他にも、計算問題など脳機能を使う問題が数多く搭載されています。

以上が簡単にご紹介させて頂きました認知症リハビリテーションの実際例です。認知症リハビリテーションにもこのようなICT機器が取り入れられてくることは時代の流れを感じさせられますね。

機器の活用は利用者様に負担感が少なくリハビリを導入できるメリットがあります。

しかし、一方では、当施設の理学療法士、作業療法士等は、利用者様と日々関わり合い、コミュニケーションを大事にしながらリハビリを行っております!(人と人とのかかわりの中で行うリハビリの精神は忘れてはいけません)。認知症リハビリテーションに興味のある方は、当施設までお気軽にお問合せ下さい。